公園の先生
ある日、いつものように公園のベンチに腰掛けていると、齢70あたりのおばあちゃんが「先生、先生」と呼びかけていました。
はて、先生?と思っていたところ、公園のバラの手入れをしていた60くらいのおじさんが気づいたようでした。
彼は区が雇っている、公園の造園係のようで、作業服を着て、これから噴水のメンテナンスをするところだったようです。
しかし彼はいったん手を止めて、ゆっくりとおばあちゃんのところへ歩み寄って行きました。
「どうしました?」
「先生、我が家のバラがあんまり伸びなくなってしまったんですが、どうしたらいいですか。」
「ああ、バラですね。そうですね。ちょっといいですか。」
彼はおばあちゃんの近くにあったバラを例に、どのあたりで剪定したら良いか、具体的に教えてくれました。
おばあちゃんは彼のアドバイスを熱心にメモに書き込んでいます。
「良いですか。冬に切ってくれれば、大丈夫ですから。」
「わかりました。先生、いつもありがとうございます。」
おばあちゃんは丁寧に感謝の言葉を伝えました。
思わぬところで素敵な師弟関係を目の当たりにして、私はとても尊い気持ちになりました。
年を取ると、なかなか人と新しい関わりを持つことがなくなってくると聞いていましたが、こんなに身近なところで新しい出会いや、楽しく学ぶ機会があることを実感しました。